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丹沢の幻の滝

神奈川県丹沢の秘境早戸川源流にある幻の滝(?)

滝百選の中で最難所の一つといわれている早戸大滝。「幻の滝」と言われているがそれにはいろいろ訳がありそうだ。もとはと言えば、滝の前面に大きな岩がかぶさり滝全体を見ることが出来ないことに由来しているそうだ。しかし実際はこの滝を発見できずに帰る人がかなりいるからだろう。また途中にもかなり危険なところが随所にあり、さらに沢を10回も越えねばならない。しかしそれだけにこの荘厳な滝を見つけたときの感動は大きかった。
はYafooの地図です。適宜縮尺を変えて付近の道や位置関係を確認ください。


滝名場所 徒歩の高低
30早戸大滝神奈川県津久井町400m以内(魚止橋から)



丹沢の早戸大滝
藤沢は、現在名古屋で単身生活をされているT氏のご本拠。まさに丹沢への入口にお住まいだ。無理をお願いして今回車を出して一緒に行っていただけることになった。平塚駅8:30出発。伊勢原を抜けて北上し宮ケ瀬湖へ。ここから早戸川に沿う林道を見つけるのはちょっと難しい。どこやらの滝と違い、大きな「**滝こちら」という看板もない。T氏から地元の方に行き方を聞いていただいて下図のルートを見つけた。津久井町道場の分岐点(下図@)が入口だ。このルートには随所に「通行止」だの「落石注意」という看板があり、自治体側の「できるだけ通ってほしくない」という気持ちがありありと表れている。

図のAの分岐点にも「早戸川上流通行止」のような看板がある。どこまでいけるのだろうと思って進むとまず「通行止」と書かれた第一ゲートBに着く。T氏は事前に「津久井町」に問い合わせてゲートが開いているのを確認されていた。

そのとおりこのゲートは開いていたので通り越して注意深く運転する。するとまた通行止のゲートCがある。 その先を見ると舗装はされているものの散石がある。さすがにここが限界だと思い、少し戻った退避場所に駐車する。
ここを出発したのが10:00頃。ここからDの魚止橋を目指して歩いた。予想よりも遥かに遠く魚止橋に着いたのは約11時15分。実はこの魚止橋まで何台かの車は散石をものともせず登ってきていたのだ。魚止橋には、水が豪快に落ちるかなりの落差の砂防ダムがある。

ここから先の林道は未舗装で、散石も大きくがけ崩れもありブルドーザー以外の車は通行困難。林道というより登山道と言ったほうがいい。そして1km強歩くと登山道入口(右図E)に着く。
登山道入口には「朽ちて案内板部分が倒れた」看板がある。この案内板の地図には、川、沢及び「早戸大滝」は記載されているものの、道がほとんど消えてしまっている。これでは、ここからどう進むのかは全くわからない。 しかし、事前に調べてあったとおり、直進はせず、看板を取り巻いてUターンをするように登山道に入った。

【備考】これから先は、木の幹に巻きつけてあったり枝から下がっている赤や黄色のテープ等の目印を頼りに進んでいく。 この目印がなくなると本道から逸脱したことになる。 これを見失わないように注意して進まないといけない。 沢では、突然こちらの岸に目印がなくなり、対岸の木等に目印が見えたとき「ここで沢をわたらないといけない」ことがわかる。看板等ほとんど無く地図と目印と勘だけが頼りだ。

E登山道入口
必ずこの看板裏を右に曲がって細い山道に入ること。

入口に入るとすぐに大きな石を登ることになる。しかしその石を登りきるとちょっと道らしくなり、最初の木陰の小さな沢Fへ着く。ここでは沢の右を登っていくように思えるが、正しくはこの沢を渡り対岸の急な斜面を登っていくのだ(よく見ると対岸の木にテープが巻いてある。)。 ちょうど上から下りてきた林業の方(?)に、道を確認した。 急な斜面を登りきると、倒れた有刺鉄線の柵が右側に続く尾根道に出る。なだらかな尾根道を進むと右手に造林小屋がある。 ここまでは、急であるがよくある山道である。 この造林小屋を越えると、崖の斜面の非常に細い道を伝っていくことになるG。 ここでは、左足元に50m下の川を見下ろしながら進むのだが、斜面にはほとんど鎖がなく、バランスを崩すととても危険。なるべく手を使って何かを掴みながら歩く。 まして、2枚の板を渡しただけの小さな谷越えの橋もあり、その橋の下は50mの谷底へ、、、という所もある。

H最初の(最後の)橋

神経をすり減らしながら進み、ロープをするすると下ると2つめの沢に出る。これで高度恐怖症の人は一安心?
しかし、その先には2本の丸太を縛った橋がかかっている。ここで後から来た若い二人組に先をゆずる。この橋を渡るには平衡感覚を必要とする。これが最初で最後の橋ということは事前に知っていた。
地図上では、これ以降沢をわたる所が4ケ所のはずだった。しかしそれは甘かった。後で数えなおすと、片道10回、往復20回沢を渡らないといけなかったのだ。川が曲がっている所は必ずその曲がりの逆方向に沢渡りをしないといけないのだ。
さて、なんとかこの丸太橋を渡り終えた。その先に進むとロープで登る所もある。そしてまもなく3番目の沢渡りIに出る。 この沢はなんとか石伝いに渡ることができた。

4番目の沢渡り....沢の流れは美しいが

4番目の沢では、先に進んでいた若者二人は苦労しながらも石へ跳び渡り先に進んでいった。われわれは、ここで石を跳び渡るのは危険と判断。 苦労して登山靴およびソックスを脱ぎT氏は運動靴でジャブジャブと、私はサンダルでザブザブと沢を渡った。 しかし、登山靴を脱いだり履いたりするのはとても面倒である。 渡り終わった後T氏からタオルを投げていただいて足を拭き登山靴を履きなおしたが、いまいちしっくりこない。 靴を履いた後、対岸に「軍手」を忘れてしまったのに気がついたが、とてもまた靴を履き替え渡る気がしなかったので、リュックにあった予備(片方だけ)の軍手を装着し先へと進む。

J雷平

ようやく中間点の雷平に到達。ここから中ノ沢方面へ向うと「雷滝」に出るらしい。
雷平から「幻の滝」までは、何度も沢を渡ることになる。 最初は苦労して渡れそうな石を見つけながら進んだ。ところが我々の後方から、カップルがどんどん近づいてくる。 よく見ると彼女の方は、沢の水の中を登山靴で平気でジャブジャブと歩いている。。。 これを見て我々も吹っ切れた。とてもサンダルに履き替えるのは面倒なので、これからはジャブジャブと登山靴で水の中を歩くことにした。 地上を歩くとじめじめして気持ち悪いが仕方が無い。。。。
しばらく進むと沢の分岐点Kに到達する。 これは地図上に記載されていない沢の分岐なので、私もはじめは滝の手前の沢の分岐点Lだと思った。 左の沢を辿ればもうすぐのはず。ちょっと進むと滝だ、、と思って進めど進めど滝が現れない。あれ?何かがおかしい。

K地図に載っていない幻惑の沢?

すると、沢の上の方から一人の若者が下りてきて、「20分程先に進んだが滝など無い。その辺りは目印も無くなっている。多くの人がその先に進んでいるが、どうもコースが違うらしい。ところで相棒を見なかったか?」と。 途中で相棒とはぐれたらしい。私はこの若者の発言にかなりあせったが、冷静に考えてみた。 先ほどの沢の分岐点Kが滝前の分岐点にしては妙に近すぎる。あの右の沢は地図に載っていない沢で、人を惑わす「幻惑の沢」だろう思い、いずれ左に見つけにくい沢が分岐しているはずだと考えた。

L分かれ道

「とりあえず我々は先に進む」と言って彼と別れて上流へと進む。ここからは沢渡りが頻出しジャブジャブと登山靴のままで川の中へ入る。 しばらく進むと、沢の左側に残雪が見え、そのさらに左にとても沢とは思えないかすかな流れが見える。 そこで立ち止まっている人がいた。「ここは左か?」と聞くと「そうだ。」との答え。 「この先行けるか?」と聞くと、「我々も今行って来たので大丈夫だ。」とのこと。 多くの人はこの分岐を見落として右の沢へ進んでしまうのであろう。この分岐点が見つかればもうすぐだ。 やはり予想通りであった。広い二つの川の沢を渡り左の沢のかすかな流れに沿って左斜面を登り崖を回ると、「見えた!幻の滝が!」。
さらにすこし崖を登ったところに一人の若者がいて写真を撮っていた。この崖上のスペースは滝の正面だが多くても3人程しか入れない。T氏もなんとかそこに登り腰掛られたが、崖から滑り落ちそうでちょっと心配であった。
その若者から「相棒を見なかったか?」と聞かれる。どうやらKの分岐点辺りで先ほどすれちがった若者らしい。彼らは以前にもここへ来たことがあるのだが、「雷滝」をこの幻の滝と勘違いして帰ったらしく今回は再挑戦だったようだ。この滝に辿り着いた彼はよかったが、相棒は2回も来てこの滝を発見できなかったことになる。なんと可愛そうな。

幻の滝〜早戸大滝

この滝は狭い岩壁と岩壁の間にあり、さらに表面の一部を岩で覆われている。荘厳で感動的な滝である。少し戻って崖に張られたロープを登るともう少し高い所から観ることができる。このロープは大変危険で、落ちると崖の下だが、もっと上から見たいという衝動からか怖さはあまり感じなかった。
2005年4月30日
その後Lの分岐点でT氏とコンビニのおにぎりを賞味。ペットボトルは各自2本ずつ持っていたがそれでも足りない程喉が渇いていた。見渡すと、この分岐点にはいつもと違った目印があるのに気がつく。 木からリボンが下がっているのではなく、空缶がぶら下がっているのだ。 苦労してこの分岐点を見つけた人がなんとか後の登山者に教えたかったのだろう。 しかしこの辺りは「看板禁止」か?看板が一つでも立っていれば判りやすいが? しかし宝探しの気分で滝に辿り着くのもなかなか楽しい。
T氏も私も、帰りの沢渡りは岩や石を無理して跳び越えずに浅瀬に水中の石をみつけジャブジャブと渡った。行きの登山靴履き替えから右足がしっくりこず、また水の中を歩いたりしたものだから、右足くるぶしに激痛が走っていた。T氏もかなり息切れして苦しそうに見えた。幸運にも魚止橋Dから、一人できた登山者の帰りの車に乗せていただき、我々が駐車した所で降ろしていただいた。彼は7:30頃から山に入っており、通行止のゲートを押し開けて魚止橋まで来られたとのこと。彼もこの大滝を見に来られたのだが、途中で犬連れの登山者と意気投合し別の嶺に登られたらしい。
車の中に替えの靴とソックスを用意していたので、履き替えると断然爽やかな気分になった。平塚駅でT氏の車を降りて電車で西船橋に戻ったが、家に帰る途中ではすでに右足の激痛は引いていた。
【後記】この滝は、ちょっと危険である。高所を通っているときは万全の注意を払う必要がある。また川渡り用のサンダルはあまり意味がなかった。このページを見て是非行ってみよう思われる方は登山靴、軍手、スティックは当然だが、@十分な水AタオルB帰りのための替えのソックス・靴(車の中で良い)は必ず用意しよう。川に転落したときを想定して、替えの衣装もあればさらに安心。

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